「MAMA」は売野機子先生の手による作品で、新潮社の『月刊コミック@バンチ』にて2012年10月号から2015年12月号まで連載されていました。
「薔薇だって書けるよ」などの短編を中心に執筆してきた、売野機子先生初の長編作品として連載当初から話題を読んだ作品でもありました。
この記事では「MAMA」を読んで面白いと思ったところや感想、読者の評判や評価についてまとめて行きたいと思います。
「MAMA」のあらすじ
そこは神に選ばれた者のみが集う寄宿学校。本当の才能の持ち主には、多大なる名誉、そして死が与えられるという……。子供達を待ち受けるのはライバルからの嫉妬、母との確執、禁断の恋、そして自分の才能への自信と戸惑い。
「MAMA」の登場人物
ガブリエル
10歳。
貧しい家で育ち字の読み書きが出来ない、家族にお金を送るためにクワイアに入団した。
入団時に渡された母親からの手紙に傷付き、そのことをずっと心の奥に抱えている。
本人は天使になることを望んでないが圧倒的な歌唱力を持つ。
ニックネームはギャビー。
ラザロ
10歳。
ガブリエルと同日にクワイアに入団した同室の少年、天使になることに憧れている。
何でもソツなくこなせるが、いつも二番手だったことを気にしていて、ソリストに選ばれたガブリエルを無視するように。
アベル
15歳。
Aクラスの中の上級生、彼のみ長ズボンを着用している。
無口で仏頂面、何を考えているかわからないタイプ。
入団当時は天真爛漫な少年だったが、ユージーンの死がきっかけで暴力的で露悪的に変わってしまった。
ミカ
12歳。
イーノクと同室の少年。
母親が出て行ってしまい、父親の再婚相手に子供が生まれたためクワイアに入団することになった。
赤毛とネコ目でユージーンに容姿が似ており、アベルと肉体関係を持っていた。
アベルの居た小屋が火事になるのを目撃してしまう。
ユージーン
三年前のクリスマスツアーで天使になった少年。
アベルに告白した後、彼の目の前で天使になってしまう。
ルース
14歳。
アベルの翌年に入団し、一番長い付き合いの少年。
一人部屋が寂しくて、枕を持って後輩達の部屋によく突撃する。
故郷の実家には双子の弟ロイがいる。
シオン
12歳。
黒髪で眼鏡の少年。
両親は共に他界している。
信仰心が厚く、素行の悪かったアベルが天使になることに反感を抱いていた。
クワイアの寮と隣接したコテッジで合宿をしている、帝室バレエアカデミーの少女デボラと親しくなる。
レビ
12歳。
シオンと同室の少年。
母親は行方不明。
いつも本を読んでおり、霊感が強く図書室に居る幽霊達と密かに会話している。
アルフレッド
12歳。
ラピガ大公国第一王子という肩書きを持つ。
歌は下手で天使候補ではないが訳あってクワイアに入団した。
ラザロの後にガブリエルと同室になり、ガブリエルが悩んだり傷付いたりする度に抱きしめて慰めていた。
イーノク
11歳。
品行方正の優等生。
『額縁の部屋』で天使になった少年の絵を飾る担当を請け負っている。
天使になる条件は孤独であることという考えを持っていて、暖かな家庭で育った自分は天使にはなれないのではないかと考えている。
「MAMA」のここが面白い!【ネタバレなし】
花の24年組作品の系譜を継ぐ王道ギムナジウムストーリー
作者である売野機子先生のインタビューでは、直接的な影響は受けていないという旨を話されていましたので、意図したものではないのかもしれませんが、寄宿学校の中で生活をする少年達の心の揺らぎの描き方やシリアスな展開、そして文学的なセリフの表現などは萩尾望都先生の「トーマの心臓」や竹宮恵子先生の「風と木の詩」に代表される名作達の系譜を引き継ぐ王道のギムナジウム作品の一つだと思うのです。
ギムナジウム作品が好きな方は是非とも一度は手に取ってみて頂きたい作品です。
天使になる=死を迎える少年達
「MAMA」の世界では飛び抜けて歌声の美しい男の子はクワイアに入団します。
通常の実力であれば、そのまま変声期を迎え青年となるのですが、天使の素質を持つ少年はその声の美しさが頂点に達した時に命を失って天使になります。
友人が天使になる瞬間を目の当たりにしてしまったアベルや生活のために歌を歌い続けているガブリエルを除いて、クワイアの多くの少年達は天使になること望んでおり、憧れを抱いているように描かれています。
死ぬことの本当の意味を理解していない、または死を恐れない初年達の姿は、少年期ならではの幼さと儚さが描かれているように思うのです。
主人公ガブリエルの生き様
幼い頃から貧しい家で育ち、鉄くずを拾ったり体を売ったりして暮らしていたガブリエル、クワイアに入る時に文字の読めない彼に宛てて書かれていた母親からの手紙はお金目当てのひどい内容のものでした。
真っ当にお金を稼いで家系を支えるガブリエルでしたが、二度目の母親からの手紙で自分自身の歌う意義を見失ってしまいます。
生きる術も知恵も持たない、まだ少年であるガブリエルはどのように生きて行くのか?
ガブリエルにとって歌うこととは、そして母親とはどんな存在なのか?
「MAMA」はクワイアの少年達を短い人生、そして主人公ガブリエルの生き様が描かれた作品ともなっています。
「MAMA」の評判や評価
売野機子先生のMAMA めちゃくちゃいい…… pic.twitter.com/G3iNZ2jqRn
— みっすー'23🌱 (@missu_aikatsu) March 12, 2023
久々にMAMA(売野機子)を読み出したらとまらない おもしろお
— 真島 (@mashimayade) December 4, 2022
「変声期を迎える年頃の短パンショタの群像劇が好きで、幸福感を掴んでおく手が別のものでいっぱいいっぱいになってしまっていて生きづらさを感じているお友達が、ちょっと息継ぎしやすくなる漫画」という範囲狭めのオススメの仕方をしているのが、売野機子先生の「MAMA」です。
— 柿紋 (@Khaki_moon) October 5, 2022
売野機子の『MAMA』めちゃくちゃよかった〜〜!“天使”の歌声を得て召されることを心の依りどころに神のもとで日々歌い続ける少年たち……萩尾望都や竹宮惠子からの系譜を感じつつ、でもけしてそれだけでない売野機子独自の世界観が……すごく良くて……
— まぐ (@sshr000) September 23, 2022
売野機子先生のMAMAはボーイソプラノと寄宿舎を描いているんだけど、お話がとても大好き。最高。
— あさひ (@dothermann) August 23, 2022
でも、売野先生の作品は最初の頃からずっと大好き。みんな読んでください。
「MAMA」の感想と評価や評判|まとめ
「MAMA」はコミックス1巻の発売当初、ギムナジウムものと話題になっていたのを見掛け、速攻で1巻を買ったのを覚えています。
登場人物の少年達は様々な生い立ちを持ち、それぞれ違った人生を選択して行きます。
そんな彼らの姿を追う中で、人生の意味とは・・・?と考えさせられる作品でした。
何度も繰り返して読む度に、読み終わった後で違った余韻を感じられるのではないかと思います。
作品が気になった方はぜひ手に取ってみて下さいね。